ベーシック・インカムでは貧困問題は解決しない


B I(ベーシック・インカム)の倫理上の問題

昨今、人工知能の発達による仕事の喪失、格差問題の解消の為など、これらの社会問題を打開する方法としてB Iの導入が提案されています。しかし、スイスでB I(ベーシック・インカム)の導入についての議会が行われ、不適当と議決されました。これと同様に、筆者はB I導入は倫理的に問題があると考えます。

B Iで貧困は解決しない

全ての人にB Iを普及した場合を考えると、確かにB Iを必要とする貧困層がそのお金を合理的に使用すれば、貧困の問題は解決されるかもしれません。しかし、そうした貧困層は、生きていく上で極めて困難な生活癖を持っており、合理的な行動は期待されません。例えばB Iで得たお金を担保に無謀な借入を行うなどです。金貸しにとっては確実な担保ではありますが、愚者にとってB Iは結局は他人の金に過ぎないのでしょう。

B Iは弱者をさらに見放す「きっかけ」となる

人は皆、愚かであり、誰しも上述のような弱者になりえます。だから人が、弱者たる愚かな人々を見捨てるとき、人は一種の心理的負担を負い、そして、その負担から逃避したい欲望に駆られます。しかし、B Iが導入され、弱者に最低限のお金が給付されれば『B Iをもらっているのだから、愚かな人々への救済は必要がない』と、その逃避欲求を満たすようになるのです。その結果、弱者はさらに見放されることになります。

裕福な人々は心理的負担を負うべきだ

人は合理性ではなく欲望によって生きるので、弱者や愚か者は消えません。だからといって、愚か者を見捨てる裕福な人々が持つ心理的な負担は、倫理的に消し去るべきではありません。そのような心理的な負担がない社会は非人道的です。B Iを導入し、貧富の差という現実から目を背けてはならないのです。