公約の意義と有権者の責任
11月1日、大阪都構想(大阪市廃止・特別区設置)の住民投票が行われました。
結果は、賛成675,829票(49.4%)反対692,996票(50.6%)で大阪都構想は否決となりました。
令和2年11月1日 執行 大阪市を廃止し特別区を設置することについての投票の開票結果(大阪市選挙管理委員会)
大阪維新の会が2011年の大阪ダブル選以降、選挙公約に掲げ続けて選挙を戦いましたが、2015年と2020年の2回の大阪市民による住民投票でともに否決され、大阪都構想は終焉を迎えました。
大阪都構想には様々な意見がありました。賛成の立場からは、広域行政と身近な行政の役割の整理による二重行政の解消と継続、行政改革の継続を求める意見がありました。反対の立場からは、都区制度への移行によるコストの懸念、コスト増による住民サービス低下の懸念、大阪市の財源が府に移ることによる、大阪市内への投資の減少の懸念が意見として挙げられていました。
2015年の住民投票時には橋下市長自身が出向いたものを含む住民説明会が39回、2020年はコロナ禍での実施ということもあり、オンラインでのものを含む住民説明会が11回開かれましたが、大阪市民には大阪都構想が何なのか、どんなメリットがあるのか、大阪維新の会の訴えが浸透しませんでした。複数の世論調査で、説明が十分でないと考える人が70%程度という結果も出ています。
しかしながら、この構想は2011年の大阪府知事・市長のダブル選挙以降、大阪維新の会候補の公約として掲げられているもので、多数の選挙を経ている構想です。
大阪都構想の住民投票が再度行われる根拠ともなった、直近の2019年の統一地方選挙では、大阪府知事・市長・大阪府議・大阪市議候補の統一マニフェスト(公約)の最重要政策として掲げられました。府知事選・市長選・小選挙区の多い府議選のみならず、多数の中選挙区・大選挙区を含む大阪市議選でも過半数に迫るなど、大阪維新の会が圧勝しました。
統一地方選 2019 NHK
つまり、有権者は大阪維新の会の最重要政策である都構想の推進を求めたと考えられます。
しかしながら、都構想の住民投票では僅差ながらも2回とも否決されました。この矛盾は一体何なのでしょうか。維新の会の政治家は公約の最重要政策として掲げた構想の実現に全力を尽くしましたが、有権者が自らの手で二度もそれを阻止したわけです。
賛成に投票した人からは、選挙で維新の会の候補に投票したのに、住民投票で反対に投票したことは理解できないという意見があり、反対に投票した人からは有権者が維新の会の都構想を白紙委任したわけではない、という意見が出ています。
確かに、選挙で選んだ候補だから、どんな政策であれ無条件に推進させるというのはおかしいです。しかし1度目の住民投票での否決後も最重要公約として掲げ、2019年の選挙で多くの議席を与えて信任した政策にノーをつきつけるということは、やはり矛盾しています。
政治家に誤ったメッセージを送ることになります。どんな公約を重要な政策だと掲げても、達成しようとすれば有権者からノーを突きつけられる。裏を返せば、公約など実現してもしなくても有権者は大して興味がないし、選挙の結果には関係がない、そう捉えられても文句は言えません。
こんなことで良いのでしょうか。政治家には、有権者に対してきちんと政策を約束させ、選挙ではその政策の達成度により当落が決まる、そうしなければ、有権者が望む政策を実現するのは難しいのではないでしょうか。
今回の大阪都構想の住民投票は、公約の意義について考えさせられる投票結果だったと思います。政治家に有権者が望む政策を実現させるためには、有権者が変わらなければならないのではないでしょうか。
政策を約束させ、実現できなければ落選させる、この環境を当たり前のことにしていかなければなりません。そのためには、選挙で自分の望む政策が正しく実行されるように、政策をきちんと理解した上で投票行動を選択する必要があります。
多くの人は、社会生活で忙しく、公約を比較する時間がありません。しかし、少しの時間でも真摯に向き合って自分なりに理解して投票することを続けることで、あまり関係ないと思っていた政治でも、少しずつ、自分の生活に密接に関係があるのではないか?そう思えてくるのではないでしょうか。
有権者側がそうした努力を続けることが、この国の政治をよくしていくのだと思います。この国の政治に絶望する前に、あるいは絶望した後に何をやるか。少しでも良い国になるように、少しの努力を続けてみませんか。政治はきっと変わると信じています。
山﨑 祥大
会計事務所職員(33歳)
京都市出身 滋賀県在住(2015年住民投票時は大阪市民として住民投票に参加)
2010年に大学卒業後 コンビニエンスストア本部社員として就職。国家公務員総合職を目指すも、官庁訪問にて採用に至らず。その後、都内のITベンチャー企業にて新卒ITエンジニア人材紹介部門にて企業向け営業を担当。現在は起業支援のできる公認会計士・税理士を目指し、会計事務所で勤務しながら会計士試験合格を目指し勉強中。